当院では2020年5月よりPRP治療を導入しています。現在流行している新型コロナウイルスの治療においても同じことが言えると思うのですが、新しい治療の効果は厳正かつ公平に評価されなければなりません。今回は変形性膝関節症の治療としてのPRP治療と従来より行われているヒアルロン酸の関節注射の効果を比較した論文についてご紹介します。

整形外科の臨床研究雑誌の中でもトップの雑誌(AJSM;The American Journal of Sports Medicine)にPRP治療がヒアルロン酸関節注射より有用であるという結果が掲載されました(2017年2月号339-346ページ)。この研究結果がなぜそんなに価値があるのかというと、二重盲検試験という、治療を受ける患者さんだけでなく治療を行う医師もPRP治療かヒアルロン酸治療なのか知らされておらず、評価に主観やプラシーボ効果が混ざることなく客観性のある結果が得られるという最大のメリットがあるからです。

また、膝関節の手術専門雑誌(The Journal of  Knee Surgery)でも変形性膝関節症の治療において、従来よく行われていたヒアルロン酸やステロイドの膝関節関節注射と比較して、PRP治療は患者さんの疼痛をより軽減し膝関節のさらに良好な機能改善効果が認められたという論文が掲載されました(2019年1月号37-45ページ)。しかしながら一方で、PRP作成においては統一された規格がなく(それぞれの企業が独自の基準を作成こそしていますが)施設によってまちまちであるため、PRP内の血小板や白血球凝縮程度が一定でないという問題点が指摘されていましたが、PRP治療がこれまでの保存治療と手術治療の間に位置する治療として確立されつつあると感じました。

当院でのPRP治療においては、まず患者さんの状態について評価を行った後に治療のメリットおよびリスクを詳しく説明します。次に患者さんと一緒にPRP治療によって期待できる効果について考え、施行するかどうかを決定します。こうした方針により、幸いにもこれまで治療を行った患者さんには疼痛の軽減や膝関節機能の改善が認められ、一定の効果が得られていると実感しています。